ペアローンで家を買った夫婦が離婚で破滅する話、数字で検証してみた

Yahoo 系不動産メディアで頻出する「ペアローン破滅ストーリー」を、都心3区・山手線内側・近郊の3つの立地でモデルケース試算。立地次第で結論が正反対になることを数字で示します。
目次
Yahooニュースや Gold Online、東洋経済オンラインといった不動産メディアでは、「ペアローンで家を買った夫婦が離婚し、自己破産に追い込まれた」という形の記事が定期的に出てきます。読み終わると「ペアローンは怖い、避けるべき」という気持ちにさせられる文章です。
しかし冷静不動産では、こうしたストーリーを 数字で検証 することにこだわっています。本記事では、典型的なシナリオをモデルケースに落とし込み、本当に「破滅」が成立するのか、立地別に試算します。
モデルケースの前提
物語によくある共通項を整理すると、以下のような夫婦になります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 物件価格 | 8,000万円(都心マンション・築浅) |
| 頭金 | 0円(フルローン) |
| 借入総額 | 8,000万円 |
| 借入構成 | 夫4,000万 + 妻4,000万(ペアローン) |
| 適用金利 | 両方とも変動 0.5% |
| 返済期間 | 35年(元利均等) |
| 月返済額 | 夫 104千円 + 妻 104千円 = 合計 208千円/月 |
| 夫婦合計年収 | 約1,200万円(DINKs想定) |
この夫婦が 購入から5年後、不仲を理由に離婚協議に入った とします。物件を手放して債務を清算する判断をしたケースを検証します。
5年後の残債
元利均等返済で5年(60ヶ月)支払った時点の残債を計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 夫の残債 | 3,471万円 |
| 妻の残債 | 3,471万円 |
| 夫婦合計の残債 | 6,941万円 |
借入8,000万円のうち、5年間で減ったのは約 1,059万円 のみ。元金充当が極端に少ない序盤の特徴です。
売却で清算できるか — 立地別シミュレーション
ここからが本題です。マンション価格は立地で減価ペースが全く異なります。Yahoo 系記事の多くは「物件が値下がりして売っても債務が残る」と書きますが、どの立地を想定しているか曖昧 なまま結論を出しているケースが目立ちます。
立地別に3パターン試算します。売却諸経費(仲介手数料3% + 諸費用約100万円)は手取りから差し引きます。
都心3区(年0%減価想定)
千代田・中央・港の中古マンション。希少性が高く、築浅でも価格維持されやすい立地。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格(5年後の評価額) | 8,000万円 |
| 売却諸経費 | -346万円 |
| 売却手取り | 7,654万円 |
| 引く残債 | -6,941万円 |
| 差引 | +713万円 |
手取り 7,654万円 > 残債 6,941万円 → 完済できる。713万円 残る。
都心マンション(年2%減価想定)
山手線内側の中古マンション。需要があり減価ペースは緩やか。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格(5年後の評価額) | 7,231万円 |
| 売却諸経費 | -323万円 |
| 売却手取り | 6,908万円 |
| 引く残債 | -6,941万円 |
| 差引 | -33万円 |
手取り 6,908万円 < 残債 6,941万円 → 約 33万円 の逆ザヤ。
近郊・郊外(年4%減価想定)
通勤圏外、私鉄沿線の中古マンション。供給多めで減価が顕在化。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格(5年後の評価額) | 6,523万円 |
| 売却諸経費 | -302万円 |
| 売却手取り | 6,221万円 |
| 引く残債 | -6,941万円 |
| 差引 | -720万円 |
手取り 6,221万円 < 残債 6,941万円 → 約 720万円 の逆ザヤ。
結論:「破滅」は成立するか
数字を並べると、結論は 立地によって正反対 になります。
- 都心3区:売却で完済できるばかりか、713万円 の手取り余剰が出ます。「自己破産」「人生終了」というオチは数字的に成立しません。
- 山手線内側:約 33万円 の逆ザヤ。離婚協議の中で夫婦が分担すれば致命傷ではない金額です。
- 近郊・郊外:約 720万円 の逆ザヤ。これは無視できない金額で、無担保債務として残ります。
つまり、Yahoo 系記事の「ペアローン破滅」シナリオは、地方寄りの立地を想定しているなら数字的に成立しますが、都心物件を前提にすると過大に煽った話 になります。
本当に問題なのはペアローンではない
「ペアローンは離婚で破滅する」という記事のオチに対する、より正確な要因分解は以下の通りです。
- 頭金ゼロ・フルローン — どんなローン形態でも、頭金がないと序盤の残債が減らず、減価に追いつかれます。ペアローン固有の問題ではありません。
- 立地と減価率の見積もり — 都心と郊外で5年後の価格は数千万円単位で差が出ます。物件選択の段階で勝敗の大部分が決まります。
- 金利上昇局面でない時の試算しか出さない — 上記は全て金利0.5%継続の前提です。変動金利が将来上昇すれば残債減少ペースはさらに鈍ります。
- 売却タイミング — 離婚直後に焦って売ると相場より安く出ることが多く、計算上の手取りは目減りします。
ペアローンそのものは「夫婦それぞれが住宅ローン控除を二重取りできる」「合算で借入枠が増える」というメリットがあり、機械的に避けるべきものではありません。避けるべきは「過剰借入」と「立地ミスマッチ」 であって、ローン形態の選び方は副次的な論点です。
公式事例:3シナリオを実際にシミュレーターに通した結果
本記事の3つの立地パターンを、当サイトの売却判断シミュレーターに実際に通して /explore に公開事例として登録 しています。記事内の数字は計算簡略化のため概算ですが、公式事例側は宅建業法準拠の仲介手数料計算や3,000万円特別控除なども含めた精緻な数字になっています。判断ロジックの詳細を見たい方はこちらから。
- 公式事例①:都心3区マンション(年0%減価) — 売却判定 neutral、手取り余剰あり
- 公式事例②:山手線内側マンション(年2%減価) — 売却判定 neutral、ほぼトントン
- 公式事例③:近郊・郊外マンション(年4%減価) — 売却判定 hold(売ると損なので保有推奨)
公式事例は冷静不動産公式アカウント(/explore で「冷静不動産 公式」名義)が定期的に投稿していきます。
あなたのケースで試算する
このモデルケースは8,000万・夫婦合算1,200万円のDINKs想定です。ご自身の年収・物件価格・金利で同じ計算をしたい場合は、以下のシミュレータが使えます。
- 売却判断シミュレーター — 公式事例3件と同じロジック。「今売る vs 保有続行」を数値で比較
- 住宅ローン比較診断 — 複数銀行・複数金利タイプを並べて月返済額・総返済額を比較
- 感度分析(センシティビティ)診断 — 金利上昇シナリオでキャッシュフローがどこまで耐えるかを確認
- マイホーム購入診断 — 物件価格・頭金・金利を入れて30年の家計シミュレーション
本記事は典型的なシナリオをモデルケースとして数値検証したものです。実在の個人・物件・取引を指すものではありません。試算は2026年5月時点の一般的な前提に基づくため、実際の取引では金融機関の審査・税制・市場相場を踏まえた個別判断が必要です。


